「なんでお前みたいなモテ男が泣いてんだよ」
「俺だって泣きたくて泣いてるんじゃない」
「…だよな、お前が惚れた女だもんな。いい女だったんだろ?」
力なくソウタはうなずいた。
俺の知る限りソウタは恋愛で泣くような男じゃなかった。
ちょっとした恋は何度もあったろうがここまで落ち込んだこいつは初めて見た。
歳のせいもあるのかもしれないが、本気だったんだなと、見ているこっちまで胸が締め付けられる。
お待たせしましたー!生2つでーす
威勢のいい声と一緒にビールが運ばれてきた。
「とりあえず持てよ」
ジョッキがカチンと切なく鳴く。
「…バカみてぇな話だけどさ、家族になる日が見えたんだよ…俺初めてで…こんな…この人と幸せになりたいなんて思ったこと…」
ああやべぇ、目頭あっつ
「全然、バカじゃねぇよ」
気づいたら俺も泣いていて、いい歳した男ふたりが泣きじゃくるカウンターに他の客は座ろうとはしなかった。
そしてひとしきり泣いて店を出る頃には、お互いの腫れた目を見て笑い合っていた。
12月の冷たい風が、無防備な首元の熱とアルコールをさらう。
「お前まで泣くとは思わなかったよ」
「冷静に考えたらまじで笑えるよな、男同士でカウンター座って泣きじゃくってんだぜ?」
やべぇー、と2人は天を仰いだ。そして遠くに見える小さな星を、ため息ひとつぶん眺めた。
「なんかでも、二十歳とかその辺の頃はさ、失恋したっつったら相手を責めてただけだったのになー。いい女だったって終われるのっていいな」
「だな、ほんとにいい女だったってのもあるし、俺たちもおっさんになってるってことだろ」
「いや〜。あ〜、なんかまた泣きそ」
変わらないものと変わっていくもの。今まさにその狭間にいるような気がして、喜びとか不安とか切なさが、渦になって胸を締めつけた。
「俺らは大丈夫っしょ」
こいつは俺の心が読めるのかと一瞬驚いたが、ソウタはいつもの能天気な顔で俺を見ていた。
俺は儚い夢を空に向かって呟いた。
「できることなら、嫁さんと子供がほしいです」
「俺もです」
この男たちに幸あれ
気を遣うでもなく、狙うでもなく、その人から出るそのままの言葉がすごく心地いい人っていますよね
本当に貴重な存在だと思う
ハイボールと焼き鳥ください
惚れた(ほれた)限り(かぎり)歳(とし)締め付ける(しめつける)生(生ビールのこと)威勢(いせい)目頭(めがしら)腫れた(はれた)無防備(むぼうび)首元(くびもと)天を仰ぐ(てんをあおぐ:上を見る)眺め(ながめ)二十歳(はたち)責める(せめる)狭間(はざま)渦(うず)能天気(のうてんき:あんま深く考えない)儚い(はかない)
幸(さち)気遣う(きづかう)狙う(ねらう)心地(ここち)貴重(きちょう)
〜これより下の〜
居酒屋(いざかや)喫煙(きつえん)藤沢(ふじさわ:神奈川の地名)大船(おおふな:神奈川の地名)ハシゴ(店を変えて飲むこと)至高(しこう:最強)開拓(かいたく)隠れ家(かくれが:人の目から隠れるようにひっそりある場所)煌々(こうこう:キラキラ)
神奈川県藤沢駅近くにある居酒屋「やきとん 焼き鳥 みっちゃん」です
めちゃくちゃ安い、美味い( )、喫煙おk
席数も結構あるんだけど、カウンター席側とボックス席が多い側とで少し離れてて、一人飲みにもおすすめのお店です
姉が茨城から時たま遊びにくるといつも、藤沢駅か大船駅周辺でハシゴするんです
姉も私も、酒のあては焼き鳥とおでんが至高なので(趣味合う)
ぼちぼち開拓中です
ちなみにこの写真は2022年の秋頃なんだけど、
やっぱり日常を切り取るのが好きだなーと、2023年の番茶は思ったのでした
やきとん 焼き鳥 みっちゃん (食べログ)
住所 〒251-0056 神奈川県藤沢市南藤沢3-6-B1(地図)
隠れ家的な入り口とありますが、ここだけ訂正させてください
めちゃめちゃ黄色く煌々と光っているので全然隠れてません、すぐわかります